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債権回収を「コスト」から「収益」へ:金融サービスにおける新たな成長領域

Mamta Rodrigues, Global Chief Client Officer, BFSI & Anurag Malholtra, VP Client Service, BFSI - 01.27.2026

今日の金融サービス企業は、延滞や債務不履行の増加、先行き不透明な経済情勢、そしてデジタルに精通した消費者の行動の変化といった市場要因により、これまでにないプレッシャーに直面しています。こうした状況の中、従来は与信ライフサイクルの最終段階として後工程的に扱われてきた回収業務 が、今まさに転換点を迎えています。現在、回収業務は単なる債権回収プロセスではなく、 顧客との信頼関係の維持、顧客生涯価値(CLV)の最大化、そして持続的な収益成長を実現するための戦略的な手段として注目されています。
 
こうした変化に金融サービス業界が適応し、競争力を高めていくため、 私たちは業界のシニアリーダーを招き、回収業務 の未来について議論を行いました。先月シンガポールで開催された、EcosystemとTP共催のリーダーズ・ラウンドテーブルでは、回収業務を部門やチャネルごとに分断されたサイロ型の運用のまま継続することには限界がある、という共通認識に至りました。 今後は、組織のレジリエンス(回復力)を強化し、持続的な成長を加速させるために、回収業務を単なるコストセンターとしてではなく、「コア・ケイパビリティ(組織能力)」として位置づけ直し、新たな運用モデルへと変革していくことが不可欠です。

 

 

1.回収業務を「戦略的な価値創造機能」へ再定義

 

キーポイント:まずはマインドセットの転換から

 

回収業務は長らく、戦略的価値が限定的な「受動的な事後対応」として位置づけられており、この固定観念こそが変革を阻む最大の障壁となっていました。  
 
大手金融機関では現在、回収業務をマーケティング、セールス、カスタマーエクスペリエンス(CX)と連動した「戦略的な収益創出ケイパビリティ」として再定義する動きが進んでいます。これにより、共感を重視した顧客対応を通じて顧客の課題を解決し、回収率を向上させ、さらには新たな収益機会を創出することが可能になります。
 
この実現には、回収業務においても、マーケティングと同様にコミュニケーション手法やチャネルのデジタル化・高度化を進めることが不可欠です。パーソナライズされた適切な顧客対応は、直接的にビジネス成果に寄与します。実際、アクセンチュアが実施した「2025年 グローバル銀行業界向け消費者調査」によれば、アドボカシースコア(顧客推奨度)が10%向上すると成長率は1%上昇することが明らかとなっています。

 

 

2.回収業務を顧客ライフサイクルに統合

 

キーポイント:回収業務は顧客ロイヤルティを左右する重要な接点 

 

業界の多くのリーダーが共通して指摘したのは、「債務が発生した瞬間に、顧客がライフサイクルから急に切り離されてしまう」という現状です。この分断は、本来サポートが最も求められる局面で、ブランドとの関係性を決定的に損なう要因となっています。


しかし同時に、この局面こそがロイヤルティを回復する最大の機会でもあります。回収業務を顧客ライフサイクル全体に統合することで、顧客の信頼を維持しつつ、ブランド体験を差別化することが可能になります。特に、顧客維持(リテンション)や再エンゲージメントは、新規獲得よりも高い価値を生むケースが多く、Bain & Companyによれば、顧客維持率をわずか5%改善するだけで、利益が最大 95% 向上する可能性があるとされています。つまり、延滞を「行き止まり」ではなく、再エンゲージメントの機会と捉えるべきなのです。思いやり・共感・透明性のある対応を通じて、将来的な貸倒損失の抑制と、顧客との信頼関係の再構築を同時に実現することができます。

 

【事例】 共感を取り入れた回収アプローチが財務成果に直結:

  • 課題:顧客信頼の維持と回収率の大幅な向上の両立を模索 - 大手国際銀行

  • TPのソリューション:独自の高度分析プラットフォーム「TP Interact」を活用。すべての対話データを解析して延滞要因を特定、連絡タイミングを最適化、給与支払サイクルに合わせたエンゲージメントを実施

  • 成果:収益が177%増加

 

 

3.回収業務をオペレーション・リスク部門と統合し、全社レベルのレジリエンスを構築

 

キーポイント:部門横断の統合が、より質の高い意思決定を実現

 

これまで回収業務は、他部門から切り離された機能として運用されてきました。しかし、今回のラウンドテーブルでは、オペレーション部門やリスク管理部門との連携強化を図ることで、成果を直接的に改善できることが明確となり、回収業務を単独の機能としてではなく、全社的なケイパビリティとして位置づけることで、効果が飛躍的に高まることが指摘されました。そのためには、リスク担当責任者が各リスク領域を横断的に統括し、ビジネスアナリストが新規顧客獲得コストとリテンション価値を照合し、回収業務を企業の戦略・財務モデルに組み込むことが求められます。

 
こうした統合により、金融機関は事後対応的な回収業務から、プロアクティブ(予防的)なリスクマネジメントへと進化することが可能となります。その結果、予算計画の精度向上に加え、高リスクセグメントの早期特定や、カスタマーライフサイクル全体を通じた顧客価値の包括的な把握が実現します。

 

 

4.    データとAIによるトランスフォーメーションの推進

 

キーポイント:データ統合がよりスマートな回収を可能にする

 

オペレーションやデータがサイロ化(部門・チャネルごとに分断)された状態では、顧客ごとに最適化されたアプローチの実行、返済意向の把握、早期介入が必要な顧客の特定が難しくなります。今回のラウンドテーブルでは、次世代の回収業務を左右するのは、データとAIのインテリジェントな活用であるという点で意見が一致しました。


特に、昨今の予期せぬ破綻・倒産の増加を踏まえ、金融機関には外部信用情報や行動データを含む「一元化された顧客像(ユニファイド・ビュー)」の構築が求められています。予測AIを活用したデータ主導のトランスフォーメーションにより、支払い傾向分析から高リスク案件の早期発見まで、回収チームに不可欠なインサイトの提供が可能になります。

 

【事例】 データ主導の回収モデルによる効率向上:

  • 課題:複数の顧客接点(アウトリーチチャネル)にまたがるデータの可視性が限定的 - APAC地域の銀行・金融サービス企業

  • TPのソリューション:AIを活用したプラットフォームを導入し、予測分析に基づく延滞要因の特定、顧客への最適な連絡タイミングの設計、ならびに給与支払サイクルに連動したエンゲージメントを実現

 

 


5. ガバナンス・コンプライアンス・リスク耐性の強化

 

キーポイント:早期関与こそが、すべてを変える鍵となる

 

AI、自動化、そしてクロスボーダーでのデータ活用が回収業務の在り方を大きく変えつつある中、先進的な金融機関はガバナンス強化へと重点を移しつつあります。各国・地域の規制遵守はもちろん、エージェンティックAIの活用に伴う新たなリスクまでを見据え、強固なコンプライアンス、リスクマネジメント、倫理基準を回収プロセスのあらゆる段階に組み込む必要があるという認識が、業界リーダーの間で共有されました。

 

特に重要なシフトとして挙げられたのが、リスク管理をカスタマージャーニーの早期段階に組み込むことです。リスクを「債務不履行が発生した後に対応する下流工程 」と捉えるのではなく、与信審査、カスタマーサービス、顧客エンゲージメントの初期段階から関与させるべきという点で意見が一致しました。 こうした早期関与により、組織全体のレジリエンスが強化されると同時に、新たに顕在化しつつあるリスクを早期に検知することが可能になります。その結果、回収チームは、正確かつタイムリーなインサイトに基づいて意思決定と業務遂行を行える体制を構築できます。

 

【事例】 回収業務の強化:

 

課題:規制要件遵守と事業目標達成の両立 – 大手デジタルバンク

 

 

今後の展望:回収業務が金融機関のレジリエンスの未来を決定づける


今回のリーダーズ・ラウンドテーブルでの議論を通じて、一つの明確な認識が浮き彫りとなりました。

 

回収業務は、もはや単なる債務を回収するための最終工程ではありません。いまや、長期的な顧客価値を最大化するための不可欠な要素であり、金融サービス業において最も戦略的に重要なケイパビリティの一つとなっています。


先見性のある組織は、回収業務を顧客ロイヤルティの向上、持続的な収益確保、長期的なレジリエンスを強力に支えるエンジンとして再定義し、成長戦略の中核として位置づけ始めています。


TPは、金融サービス企業の皆さまがこの新たなステップへ踏み出し、債権回収を「コスト」から「収益を生み出すエンジン」へと転換することをご支援いたします。


貴社の債権回収を、戦略的な収益創出エンジンへと変革するために、ぜひTPにご相談ください。